前回公開した「残量バー」の自作記録は、体験記の下書きをAIに書かせて作りました。出てきた下書きには「Windowsを起動すると自動で立ち上がります」と書いてありました。私は、その登録をしていません。
正確に言うと、起動時に立ち上げるスクリプトを作るところまでは本当です。それを登録する手前で止めていました。「機能を作った」と「自分が使っている」が、下書きでは1つになっていました。
この記事は、その下書きを公開前の検品に通した記録です。どの層で何が捕まり、何が最後まで残ったかを、件数つきで書きます。
先に結論
- AIは「何をやったか」は資料から書ける。「なぜやったか」は書けない
- 機械検品0件・AIレビュー2往復・事実の照合4件のあとにも、誤りが4件残っていた
- 最後に残るのは、なぜそれを作ったかという動機。そこは本人が読むしかない
検品を4層に分けています
このブログの記事は、AIに下書きを書かせて、人が直す形で作っています。渡すのは設計メモと作業ログです。検品は4層に分けていて、前回の記事で各層が捕まえた件数は次のとおりでした。
| 検品の層 | 見ているもの | 捕まえた数 |
|---|---|---|
| 機械検品(grep・検査スクリプト) | 禁止表現・書式 | 0件 |
| AIレビュアー(経緯を知らない別のAI) | 形式・論理の破れ | 1回目 違反6件+要目視8件/書き直し後 違反4件 |
| 事実の照合 | 主張と手元の記録の一致 | 4件 |
| 本人の通し読み | 動機と、理由の並べ方 | 4件(うち2件が記事の芯) |
機械検品の0件は「誤りがなかった」ではありません。grepが見ているのは書式と禁止語だけで、文章の中身はこの層を素通りします。
別のAIにレビューを往復させる仕組みはルール化した記事があり、同じ工程をコードに掛けた実録も以前書きました。今回はこれを、自分の体験記に掛けた回です。
2層目:経緯を知らないAIが拾った、3つの型
2層目では、書いた経緯を知らない別のAIに、原稿だけを渡して読ませます。出てきた指摘は、3つの型に分かれました。
1つ目は、確かめていないことを断定していた箇所です。既製のツールを8本調べた節で、それらが内部で何をしているかについて、必ずこうなっている、と断定していました。ところが同じ記事の別の場所には、中身を見ない限り分からない、とも書いていました。
分からないと書いておきながら、必ずそうだ、と断定していたことになります。読む人は、どちらを信じればいいのか決められません。
2つ目は、読者の関心を代弁していた書き出しです。冒頭が「残量が気になります」で始まっていました。誰の話でもない入り方で、少なくとも私の言葉ではありません。
3つ目は、機械の擬人化です。「トレイアイコンが死ぬ」のような言い回しが複数ありました。それらしく読めますが、何が起きるのかは説明していません。
3つに共通するのは、書いた本人には見えないことです。理由を知っていると、断定と留保がどちらも本当に思えます。レビュアーに経緯を渡さないのは、そのためです。
3層目:主張を1件ずつ、手元の記録と突き合わせる
3層目では、本文の主張を1件ずつ抜き出して、手元の記録と突き合わせました。ここで4件出ました。
1件目が、冒頭の起動の話です。スタートアップフォルダを見て、登録していないことを確かめました。
2件目は行数です。「約1,400行」と書いてありましたが、数え直すと1,497行でした。
3件目はAIモデルの呼び名です。「変わった」と書いてありましたが、2026年8月の時点で私の手元では、古い名前も新しい名前も、両方そのまま使えました。
4件目のツール名には、続きがあります。
下書きにはusage-monitor-for-claudeというツール名が出てきました。2026年8月16日にGitHubを検索したときは、見つかりませんでした。私が実際に見ていたのはClaude-Code-Usage-Monitorという別のツールです。AIが作った名前だと判断して、確認できたほうに差し替えて公開しました。
この記事を書くために、2日後の8月18日に検索し直しました。今度は同名のツールが見つかりました。私の探し方が悪かったのか、その後に公開されたのかは分かりません。AIの作り話だと判断して直した名前が、実在していたことになります。
4件とも、出どころは同じでした。私の手元の設計メモと作業ログです。書いた時点の記録なので、推定も未確認も混ざっています。AIはそこから下書きを組むので、当たり直さない限り、古いメモの中身がそのまま「確認済みの事実」として記事に載ります。
4層目:3層を通しても残った、動機の誤り
ここまでの3層を通してから、最後に自分で通して読みました。そこで、まだ4件出ました。どれも文章としては通っていて、誤字も矛盾もありません。このうち、記事の芯に関わる2件を書きます。
動機が、私のものではなかった
下書きは、ツールを作った動機を「走らせる前に残量を知りたかった」という筋で組み立てていました。設計メモから導ける、説明として正しい動機です。
実際は違いました。重いモデルで走らせている最中に、あとどれくらい使えるのかが見えません。Codexにレビューを回している間も同じです。それがつらいので、常時見えるようにしました。
作業の前ではなく、作業中の話です。公開した記事の見出しは「Claudeの残量を、作業中ずっと見ていたい」に直しました。この型の誤りは、事実の照合では出ません。突き合わせる先の資料に、動機が書いていないからです。
理由の順番が、違っていた
既製のツールを見送って自作した理由を、下書きはセキュリティで説明していました。パソコンに入っているログイン情報を、よそのツールに預けたくない、という話です。それも理由の1つではあります。ただ、先にあったのは「AIで作れる今の時代、作らせてみるか」でした。
並べる事実は同じでも、どちらを先に置くかで別人の話になります。公開時の見出しは「既製のツールは8本あった。それでも作ってみた」にしました。メモに残るのは決定と根拠だけで、そのとき何を思っていたかは残りません。
まとめ:事実の器はAIで作れる。動機は本人が上書きする
AIに体験記の下書きを任せると、「何をやったか」は資料から正確に組み上がります。最後まで残るのは、なぜそれをやったかのほうでした。
まとめ
- 機械検品0件・AIレビュー2往復・事実の照合4件のあとに、誤りが4件残っていた
- 残っていたのは動機と、理由の並べ方。資料に書いていないことは、AIには書けない
- 体験記のAI下書きは、事実の器としては使える。動機は本人が上書きする
本人の通し読みは、最後の1回に絞ります。最初から本人が全部を見ると、通し読みが検品のやり直しになって続きません。先の3層を通しておけば、「これは自分の話になっているか」だけを読めます。
最後にもう一度書いておくと、この記事の下書きもAIに書かせて、同じ4層を通しています。ここに並べた型の誤りが、この記事自体に残っている可能性もあります。見つけたら直して、次の記事のネタにします。
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